1993 年 46 巻 2 号 p. 207-210
症例は16歳の女性で,直腸脱に対してGant-三輸法・Thiersch法併用手術を行った.その第8病日に,排便時に突然の腹痛を訴え,下腹部に認めた腹膜刺激症状,白血球数の著明な増多などから大腸穿孔をもっとも疑い緊急手術を施行した,下腹部正中切開で開腹したところ,S状結腸直腸移行部でGant-三輪法の手術創口側端直上の前壁に穿孔が認められた.術式は縫合閉鎖術を行ない,腹腔内を5,000mlの温生食水で洗浄した.術後経過は順調であった.今回の大腸穿孔について文献的に考察,検討したところ,大腸穿孔の好発部位であるS状結腸上部直腸にGant-三輪法を行う場合には,しぼり操作を固有筋層にかからぬように行い,かつ,しぼりによる狭窄には十分注意を払い,前壁のしぼりを粗にし小さくすることが,穿孔を予防するうえで肝要と結論した.Gant-三輪法施行後に大腸穿孔という本邦では現在まで報告のない重篤な合併症を経験したために症例報告した.