1993 年 46 巻 2 号 p. 211-214
症例は67歳の女性で,2年7か月前に肛門部に大豆大で暗黒色の腫瘤を触知した.腫瘤が増大したため,触知1年3か月後に近医で結紮術を受けた,しかし,腫瘤が再発したため,当科を受診した.腫瘤は肛門部の5~8時方向に存在し,くるみ大,広基性,暗黒色,表面平滑,弾性硬,軽度の圧痛を認めた.超音波検査で肛門部に内部エコーが不均一で境界不整な5.0×4.2×3.8cmの腫瘤を,CT検査でも充実性の腫瘤を認めた.針生検で悪性黒色腫と診断されたため,広範囲リンパ節郭清を伴う腹会陰式直腸切断術を考慮した.しかし,患者が人工肛門を強く拒否し,また経腹的後腹膜リンパ節および経皮的そけい部リンパ節吸引生検で転移を認めなかったため,経肛門括約筋的直腸局所切除術を行った.術後に免疫化学療法として,DAV療法とインターフェロンを投与した.術後5か月現在,再発の所見はなく,外来にて経過観察中である.