1993 年 46 巻 4 号 p. 359-361
症例は49歳,男性.1992年7月会社で作業中,突然無痛性の新鮮下血が出現したが自然止血した.大腸内視鏡検査では,歯状線近傍直腸後壁を中心として帯状に多発する浅い地図状不整形潰瘍を認めた.生検組織検査では,粘膜に軽度の繊維化を認めたが,炎症細胞浸潤はほとんどなく,特異的炎症所見は認めなかった.出血以外に自覚症状はなく,重症基礎疾患や発症誘因は認めなかった.23,38,43,46歳時に今回と同様の下血があったが,いずれも自然止血し,今回同様の病変によると思われる.本症例のように,再発を繰り返した,いわゆる"急性出血性直腸潰瘍"は本邦に報告例がなく,稀な1例と思われるので報告する.