1993 年 46 巻 4 号 p. 384-389
患者は76歳,男性.高齢にて発症した潰瘍性大腸炎で,直腸炎から左側型,全結腸型へと急激に進展悪化し,中毒性巨大結腸症を合併した.臨床的に中毒症状は軽かったが,連目下血が見られ,横行結腸の最大径は15cmまで拡張したので,穿孔の危険性が考えられ,手術に備えた.ところが,諸事情により患者が手術を拒否したため,内科的治療を続け,全身状態の改善に努めた.大量のステロイド剤の静注と注腸投与を併用することによって,臨床症状および結腸の拡張状態が改善された.高齢者の場合一旦発症すると,急激に悪化する場合が多い.殊に中毒性巨大結腸を合併した場合,絶対的手術適応と考えられるが,本症例は集中的なステロイド療法によって軽快した.