1993 年 46 巻 4 号 p. 394-399
柴苓湯の潰瘍性大腸炎な対する治療効果とHLA-DR抗原のタイピングとの関連性について検討した.20例の潰瘍性大腸炎患者に対し,Terasaki-NIH-Standard法によりDRのタイピングを行った.臨床症状の改善の有無緩解期の維持効果,SASPの減量(離脱)効果の3つの方向から柴苓湯の治療効果を解析すると,いずれの効果判定方法においても,治療効果ありの群ではDR2の占める割合が効果なしの群に比べて有意に多く,DRw8の陽性率は効果なしの群で有意に高率であった.なお性,重症度,臨床経過,病変範囲などの背景因子に関しては,効果ありと効果なしとの間で統計学的有意差は認められなかった.以上よりDR2を有する潰瘍性大腸炎患者に柴苓湯を投与することにより,本薬剤に対する有効率がさらに上昇することが予測され,逆にDRw8を有する症例には柴苓湯の投与は慎重に行うべきと考えられる.