1994 年 47 巻 2 号 p. 183-188
症例は49歳の男性で,左下腹部痛と同部の腫瘤触知,便通の狭小化を主訴に来院した.大腸内視鏡検査ではS状結腸に,分葉状で,中心陥凹を有する腫瘤を認め,3型の大腸癌を疑い内視鏡下生検が施工された.生検組織は4カ所より採取されたが,すべて腺管絨毛腺腫との病理診断で悪性所見は認められなかった,しかし,画像診断では膀胱浸潤を伴った約10cm大の進行癌と診断され,高位前方切除,膀胱部分切除が施行された.摘出標本では10×14cm大の腫瘍塊で,表面は結節状,乳頭状で一部に不整陥凹面がみられた.病理組織学的に腫瘍組織は比較的整った腺管を形成し,細胞異型は乏しいが,深部浸潤が漿膜下層まで達していることからきわめて分化した腺癌と診断した.