日本大腸肛門病学会雑誌
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直腸癌術前照射療法における経時的内視鏡下生検の意義および組織学的効果判定予知に関する検討
滝口 伸浩更科 広実斉藤 典男布村 正夫幸田 圭史中島 伸之
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1994 年 47 巻 4 号 p. 343-349

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抄録

直腸癌術前照射43症例(42.6Gy)の,照射前後の生検組織像と切除標本の組織像を検討し,経時的内視鏡下生検の意義について評価した.内視鏡下に腫瘍周堤,潰瘍底,近接粘膜より2個ずつ生検組織を採取した.生検では,癌細胞の変性程度を評価し,核や核小体の高度変性,核の消失や細胞質の崩壊を示す症例を高度変性群とした.切除標本の照射効果はGrade(Gr)1b以下(1群):24例,Gr2以上(II群)二19例であった.照射後生検の癌細胞採取率は1群91.7%,IIX47.4%であり(p<0.01),そのうち高度変性群が1群54.5%,II100%であった(p<0.05).また近接粘膜の傷害は軽度であった.内視鏡による形態変化が大きい症例ほど癌細胞採取率は低かった.以上より,照射効果が大きいほど癌細胞採取率が低下し,高度変性細胞が採取されたが,効果の低い症例においても高度変性細胞が採取される比率が高く,組織学的効果を生検組織像のみから判定することは困難であることが示唆された.

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