1995 年 48 巻 7 号 p. 581-586
5-FU持続投与による術前化学療法中に完全に脱落した直腸癌の1例を経験した.大腸癌は抗癌剤に対して抵抗性が高いが,化学療法のみで脱落したことは術前化学療法を考える上で示唆に富むと考えられるので報告する.症例は70歳,女性.Ra部の約4cm大の亜有茎性のIsp'型の直腸癌に対して術前化学療法として5-FUを3週間(250mgで1週間,375mgで2週間)24時間持続全身投与したところ,手術時に潰瘍病変部のみを残して完全に脱落しており,病理学的にも悪性細胞を認あなくなっていた.この著効例を通して直腸癌に対する5-FUによる術前化学療法を持続投与で行う意義について文献的考察を加えて検討した.