日本大腸肛門病学会雑誌
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低位前方切除後の吻合部肛門間の粘膜橋により肛門部痛を呈した1例
前田 耕太郎丸田 守人内海 俊明遠山 邦宏佐藤 美信奥村 嘉浩升森 宏次小出 欣和松本 昌久
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1998 年 51 巻 2 号 p. 103-107

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抄録

直腸肛門術後の肛門痛の原因には種々のものがあるが,原因不明のものも多い.著者らは,低位前方切除後の吻合部肛門間の粘膜橋の牽引により肛門部痛を呈したと考えられる1例を経験したので報告する.症例は57歳の男性で,10年前にRs直腸癌で低位前方切除術を施行され,術後minor leakを認めたが保存的に治療された.退院後より排便時の肛門痛を認め,翌年に吻合部狭窄に対しブジー,3年後には狭窄形成術を行い術後の縫合不全には保存的治療がなされた.その後も肛門痛は持続し,症状の増悪のため受診した.大腸鏡では,吻合部は肛門縁より4.5cmにあり,送気量を多くすると後壁の吻合部肛門間の粘膜橋が明らかとなり,同部の刺激で肛門痛を訴えたため,腰麻下で,粘膜橋の形成術を施行した.術後,肛門痛は消失し,術後8カ月の現在症状の再発はない.術後の肛門痛では,このような病態もあることを認識し,診断では直腸の拡張による観察が重要と考えられた.

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