日本大腸肛門病学会雑誌
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51 巻, 2 号
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  • TNM分類と大腸癌取扱い規約との比較
    香山 浩司, 太田 博俊, 上野 雅資, 関 誠, 畦倉 薫, 高橋 孝, 加藤 洋, 柳沢 昭夫
    1998 年 51 巻 2 号 p. 57-64
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    リンパ節の転移程度と所属リンパ節の分類の妥当性にっき,TNM分類と大腸癌取扱い規約を比較検討した.対象は1974年から1988年までに癌研外科において根治手術が行われ,リンパ節転移陽性であった結腸癌162例である.TNM分類,大腸癌取扱い規約ともに,nlとn2,n3群との累積5年生存率(以下,累積5生率)の間には有意差があり,リンパ節の転移程度はいずれも予後を反映していた。また所属リンパ節の分類法は,転移個数を基にしたTNM分類より解剖学的な拡がりを基にした大腸癌取り扱い規約の方が,転移率の分布が妥当で(TNM:n1=14.4%,n2=2.5%,n3=7.9%,規約:n1=15.9%,n2=7.4%,n3=1.4%),累積5生率の開きも適当であった.(TNM:n1-86.0%,n2=68.8%,n3=64.7%,規約:n1=84.5%,n2=66.7%,n3;55.6%)
  • 太田 智之, 折居 裕, 村上 雅則, 今田 英樹, 伊澤 功, 中野 靖弘
    1998 年 51 巻 2 号 p. 65-72
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    地域住民検診における早期大腸癌発見の向上を目的とし,1993年から2つのモデル地区において全大腸内視鏡検査(CS)による二次精検を実施し,注腸造影検査(BE)法と比較検討した。CS検診群の精検受診率は71.5%でBE検診群は83.0%であった.1人あたりの発見病変数はそれぞれ0,725,0.253で有意にCS検診群の発見数が多かった。発見病変はCS検診群240病変,BE検診群57病変で,癌発見数はBE検診群7病変(発見率0.09%)であったのに対し,CS検診群19病変(0.24%)で特にsm癌の発見率が高かった.表面型腫瘍,結節集簇型病変はCS検診群であわせて58病変(発見率24.2%),BE検診群6病変(10.5%)発見され,有意にTCS検診において多かった.TCS検診は精検受診率の低下や検診の受け入れ体制に問題点もあるが改善は可能であり今後積極的に導入すべき方法と考えられた.
  • 近藤 昭宏, 臼杵 尚志, 森 誠治, 前場 隆志, 前田 肇
    1998 年 51 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    CD44の活性は細胞膜上の局在変化によって誘導されると考えられている.本研究はこの活性化機構を考慮し,CD44の細胞内局在の違いと肝転移能との関係を明らかにすることを目的とした.結腸癌の27例(肝転移症例10例を含む)を対象として,CD44の陽性率および細胞内局在と肝転移の関連性を免疫組織化学的に検討した.その結果,陽性率は肝転移症例で高い傾向にあったが有意ではなかった.細胞内局在では,CD44が基底膜側に局在した症例に肝転移陽性例が多く(71.4%),肝転移陰性例には1例も見られなかった(p=0.01).以上より,基底膜側に局在したCD44は活性型と推察され,同部にCD44が局在する腫瘍は高い転移能を有するものと考えられた.またCD44と癌の転移能との関連性を評価する上で,活性化機構を考慮した細胞内局在の差を検討することが重要であると思われた,
  • Goodwinの変法によるAugmentation
    太田 博俊, 高橋 孝, 上野 雅資, 関 誠, 石原 省, 福井 巌
    1998 年 51 巻 2 号 p. 80-85
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌の膀胱浸潤例は,骨盤内臓全摘を余儀なくさせていたが,現在は手術手技の向上と,癌の進展に対する研究の結果により術後のQOLを考慮した術式が行われるようになり,膀胱頸部に癌浸潤がなく温存可能であれば,膀胱全摘せずに膀胱部分切除,膀胱再建,膀胱拡大術が遂行できる.膀胱浸潤直腸癌5例,直腸癌術後局所再発例1例に本術式を施行した.膀胱拡大には回腸を使用し,カップパッチを作成し,口側に輸入脚を併設するGoodwinの変法を行った.術後3カ月の血清電解質と上部尿路機能に異常なく,膀胱造影で尿管への造影剤の逆流はなかった.Uro-FlowmetryでMax Flow Rateが,平均17.4±3.9ml/sと良好であった.膀胱内圧測定は,排尿筋収縮が低圧ではあるもののほぼ正常型を示した,Goodwinの変法は尿管回腸吻合部に逆流防止装置を考慮せずに逆行性感染を防ぐことができる利点を有し,QOLを高める術式であると考える.
  • 佐原 博之, 岸本 圭永子, 仁丹 利行, 松下 昌弘, 秋山 高儀, 冨田 冨士夫, 斎藤 人志, 高島 茂樹
    1998 年 51 巻 2 号 p. 86-91
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門周囲に発生した巨大尖圭コンジローマの1例を経験したので報告する.患者は56歳,男性.肛門痛および肛門周囲腫瘤を主訴に来院,当院皮膚科で凍結療法および5-FU軟膏治療を受けたが症状は改善せずむしろ増悪傾向を示したため紹介された.腫瘤は肛門を取り囲むようにみられ,12×7cm大,カリフラワー状で弾性軟,悪臭を伴う灰白色の腫瘤があった.生検結果は尖圭コンジローマで悪性所見はみられなかった.手術は,腫瘤より約5mm離して肛門管を中心に環状に皮下組織を含めて腫瘍切除を行った.再建には皮膚欠損部の上下を縫合閉鎖し,その後過度の緊張がかからない状態で皮膚と肛門移行上皮とを縫合した.なお創部の安静を図るため横行結腸を用いて人工肛門を造設した.病理組織所見では表皮の肥厚と乳頭状増殖を認めるが基底細胞層の乱れや異型性はなかった.術後経過は良好で3カ月後に人工肛門を閉鎖し,1年6カ月を経過した現在,再発の兆候はなく排便機能も良好である.
  • 本田 一幸, 大木 進司, 安斎 圭一, 菊地 洋一, 安藤 善郎, 吉田 典行, 土屋 敦雄, 阿部 力哉
    1998 年 51 巻 2 号 p. 92-97
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は20歳の女性.1994年4月,家族性大腸腺腫症の診断で大腸全摘術を施行した.1995年10月より右下腹部の硬い腫瘍に気付き,1996年に入って頻尿,残尿感も出現した.その後も腫瘍は増大するとともに疼痛も訴えるようになったため,4月手術を目的に入院した.入院時の所見では右下腹部の腫瘍は9.3×8.1cm,右上腹部は4.5×3.9cmを計測した.腹部CTでは腹直筋内に境界明瞭な充実性腫瘍が描出され,左腎は腎盂が拡大し水腎症に陥っていた.DIPおよびRPでは左尿管の骨盤内での狭窄がみられた.腹壁デスモイドおよび腹腔内デスモイドによる左尿管狭窄と診断して6月4日に手術を施行した.腹壁のデスモイドを切除後開腹した.腹腔内では左尿管の狭窄部の他,4個のデスモイドを認めすべて切除した.デスモイドは妊娠可能な女性に好発し,手術などの外傷が契機となって発症するといわれているが,この様に多発した症例の報告はまれであり,文献的考察を加え報告した.
  • 望月 能成, 石原 伸一, 山崎 安信, 渡部 克也, 森脇 義弘, 坂本 和裕, 南出 純二, 須田 嵩, 竹村 浩
    1998 年 51 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性,肛門部腫瘤と肛門出血を主訴に当院を受診された.肛門管癌と診断し,1995年9月11日経肛門的腫瘍摘出術を施行,術中所見で腫瘍の肛門側に白色に肥厚しだ粘膜が認あられ一部同時に切除した.病理組織学的所見では,腫瘍は高分化腺癌,mp,ly0,V0,ew(―)であった.同時に切除した肥厚した粘膜には腫瘍と連続してPaget細胞の上皮内進展を認めた.肛門周囲Paget病変を伴う肛門管癌と診断し1995年9月25日仙骨腹式直腸切断術を施行した.切除標本ではPaget病変は肉眼的皮膚病変を越え肛門管上皮内にほぼ全周性に認められ,一部肛門縁を越え肛門周囲皮膚に浸潤していた.術後経過は良好で,現在外来経過観察中である.Paget病変を伴う直腸肛門癌は非常に稀であり本邦報告18例を含め検討した.
  • 前田 耕太郎, 丸田 守人, 内海 俊明, 遠山 邦宏, 佐藤 美信, 奥村 嘉浩, 升森 宏次, 小出 欣和, 松本 昌久
    1998 年 51 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸肛門術後の肛門痛の原因には種々のものがあるが,原因不明のものも多い.著者らは,低位前方切除後の吻合部肛門間の粘膜橋の牽引により肛門部痛を呈したと考えられる1例を経験したので報告する.症例は57歳の男性で,10年前にRs直腸癌で低位前方切除術を施行され,術後minor leakを認めたが保存的に治療された.退院後より排便時の肛門痛を認め,翌年に吻合部狭窄に対しブジー,3年後には狭窄形成術を行い術後の縫合不全には保存的治療がなされた.その後も肛門痛は持続し,症状の増悪のため受診した.大腸鏡では,吻合部は肛門縁より4.5cmにあり,送気量を多くすると後壁の吻合部肛門間の粘膜橋が明らかとなり,同部の刺激で肛門痛を訴えたため,腰麻下で,粘膜橋の形成術を施行した.術後,肛門痛は消失し,術後8カ月の現在症状の再発はない.術後の肛門痛では,このような病態もあることを認識し,診断では直腸の拡張による観察が重要と考えられた.
  • 安藤 浩, 友近 浩, 松田 保秀, 小澤 享史, 馬傷 正三
    1998 年 51 巻 2 号 p. 108-114
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸の粘膜脱症候群は,比較的まれな疾患であり,肉眼的に直腸癌と粉らわしい症例もある.今回われわれは,直腸の粘膜脱症候群15例16病変について臨床病理学的に検討を行った.15例の内訳は,男性11例,女性4例で,肉眼的形態は隆起型13病変(81.3%),潰瘍型2病変(12.5%),colitis cystica profunda 1病変(6.2%)であった,14症例(93.3%)に脱肛を認めた.また排便時のいきみ,便秘や下痢,1回の排便時間が長い,排便回数が多いなどの排便障害が多く認あられた.治療は,排便コントロールが重要であり,外科的切除術後であっても,再発の予防のためには食事指導や整腸剤の投与なども考慮する必要がある.
  • 大山 高令, 桜井 幸弘, 神坂 和明
    1998 年 51 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    われわれは内視鏡的に観察された潰瘍性大腸炎(UC)のうち虫垂開口部周囲病変(以後,虫垂部病変)について,UC経過中の推移を内視鏡的に検討した.対象は全結腸が内視鏡で観察されているUC145例中虫垂部病変を有する16例である.16例の平均年齢は45.9歳で,男女比は7:9.虫垂部病変は初回内視鏡施行時に8例で発見され,16例全体では平均2.7回目に発見された.虫垂部病変の内視鏡所見はUCの活動期の像に類似し,主病変は直腸炎4例,左側大腸炎7例,その他5例であった.16例中7例ではUCの初回診断時には虫垂部は正常で,経過観察中に虫垂部病変が出現した.虫垂部病変の経過観察は7例に行われ,病変の消失が5例,不変が2例であった.経過観察期間中の主病変の治療はsalazosulfapyridine,pre-dnisoloneで行われていた.UCにおける虫垂部病変の臨床的意義については今後さらに検討が必要と思われる.
  • 1998 年 51 巻 2 号 p. 121-134
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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