2003 年 56 巻 3 号 p. 103-108
閉塞性左側大腸癌に対する経肛門的イレウス管の有用性と問題点を検討した.閉塞性左側大腸癌39例を対象とし,経肛門的イレウス管挿入を試みた23例を検討するとともに,イレウス管留置群(A群;21例)と非留置群(B群;16例)を比較検討した.結果,経肛門的イレウス管留置は23例中21例に成功し,留置に伴う合併症はなく,腸管の減圧,洗浄は効果的に行うことが可能であった.ただし8例にチューブ先端の圧迫による潰瘍形成を認め,うち2例はUl-IVの潰瘍であった.術式に関してはA群では15例(71%)に一期的吻合を行ったのに対し,B群では結腸亜全摘術やHartmann手術を選択することでリスクの高い吻合を避けた症例が多かった.両群間に郭清度,根治度,手術時間に差はないものの,術後合併症としてB群で創感染が有意に多く入院期間も延長していた.経肛門的イレウス管留置は比較的容易であり,一期的吻合を安全に施行するうえでも有用であるが,潰瘍形成には注意が必要である.