日本大腸肛門病学会雑誌
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塩基性線維芽細胞増殖因子を用いた肛門部術後創(特に難治創)の治療
加川 隆三郎坂田 晋吾多田 正晴関岡 敏夫
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2003 年 56 巻 6 号 p. 289-293

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抄録

トラフェルミン(フィブラストスプレー)は, ヒト遺伝子組換え体で産生されるヒト塩基性線維芽細胞増殖因子 (basic fibroblast Broth factor : bFGF) を主成分とする世界初のサイトカイン外用治療薬である. この薬剤は, 血管内皮細胞, 線維芽細胞膜等上に存在するFGF受容体に特異的に結合, 直接的に血管新生作用, 肉芽形成促進作用, 表皮形成促進作用を発現させる. 今回, 痔瘻手術後に治癒遷延(術後2カ月~1年3カ月)を生じた12症例にトラフェルミンの投与を試みたところ, 11症例は2週間以内に完全治癒した. またseton法による坐骨直腸窩痔瘻, 骨盤直腸窩痔瘻10症例の治療に, この薬剤を計画的に併用療法として使用することにより, 治療期間の大幅な短縮が可能であった. トラフェルミンにより, 近い将来, 肛門疾患治療法に大きな変化が訪れることが予想された.

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