日本大腸肛門病学会雑誌
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VI.家族性大腸腫瘍の遺伝カウンセリング
新井 正美宇都宮 譲二武藤 徹一郎
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2004 年 57 巻 10 号 p. 884-891

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抄録

遺伝カウンセリングとは,ある家系の遺伝性疾患の発症や発症のリスクに関連した人間の問題を扱うコミュニケーションの過程であると定義される.この中には,疾患に関する情報収集,遺伝情報の提供,リスク評価,遺伝子診断の説明や結果の開示,さらに治療方針を含めた患者の意思決定の援助などが含まれる.大腸の遺伝性疾患の場合,多くは成人まで通常の生活を送っており,遺伝性疾患との認識を持っている患者は少ない.遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)は個々の病変からは本疾患とは診断できない.診療上,臨床的な診断基準を用いるが,確定診断は遺伝子検査による.理論的なリスク評価を行う場合,Bayesの定理を用いる.その際,年齢別の累積リスクのデータが基本になる.HNPCCではlate onsetであり,浸透率は70%程度であることからリスク評価は難しいことが多い.さらに臨床的には遺伝性大腸疾患の患者は各疾患に応じたサーベイランスが不可欠であり,生涯にわたる心理社会的支援を含めた継続的なケアが重要である.

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