抄録
直腸肛門部に発生する悪性黒色腫は,比較的稀な疾患であり極めて予後不良である.今回われわれは,本症の手術後長期生存例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は59歳男性.検診の直腸指診で腫瘤を指摘され,大腸内視鏡検査後に生検依頼にて当科を紹介された.生検にて悪性黒色腫の診断を得て,腹会陰式直腸切断術を施行した.大腸癌取り扱い規約に準じると,SM, P0, H0, M(-), N(-), Stage I, CurAであった.病理組織像では黒褐色のメラニン顆粒を有する腫瘍細胞が粘膜筋板を越えて存在していた.術後は化学療法を行い,術後6年たった現在外来経過観察中である.