日本大腸肛門病学会雑誌
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58 巻, 2 号
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  • 中村 隆俊, 三富 弘之, 菊池 史郎, 佐藤 武郎, 小澤 平太, 國場 幸均, 井原 厚, 大谷 剛正, 渡邊 昌彦
    2005 年 58 巻 2 号 p. 59-63
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    本邦では,大腸癌の病期分類として日本大腸癌取扱い規約(以下JGR),欧米ではAmerican Joint Committee on Cancer and the Union Internationale Contrele Cancer(AJCC/UICC)TNM(以下TNM)分類が広く用いられている.本研究はDukesC大腸癌患者においてJGRとTNMのリンパ節分類と予後との関係を明らかにし,いずれの分類が妥当であるかを検証することを目的とした.治癒切除が施行されたDukesC大腸癌患者386例を対象とした.転移リンパ節の解剖学的位置にもとずいたJGRによるn-stage,リンパ節転移個数による新TNM分類のN-stage,そして,既存の臨床病理学的因子(性別,年齢,腫瘍径,占居部位,組織型,深達度,リンパ管侵襲,静脈侵襲)について,多変量解析を用いて予後規定因子につき検討した.単変量解析では,腫瘍径,深達度,リンパ管侵襲,静脈侵襲,JGR(n-stage),TNM(N-stage)の6因子で5年生存率に有意差を認めたが.多変量解析ではTNMのリンパ節転移分類のみが,DukesC大腸癌患者の独立した予後規定因子であった(p<0.0001,odds比:2.876).系統的リンパ節郭清を施行したDukesC大腸患者において,TNMのN-stage分類は,解剖学的な位置によるJGRのn-stage分類より予後を予測する上で,妥当な分類と考えられた.
  • 新田 敏勝, 木下 隆, 常深 聡一郎, 菅 敬治, 森田 眞照
    2005 年 58 巻 2 号 p. 64-68
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎やクローン病に代表される炎症性腸疾患では,内科的治療に抵抗を示した場合,外科的治療を施行せざるを得ない.また分割手術を施行するにあたっては一時的ではあるが,回腸人工肛門の造設を余儀なくされる.症例は38歳の女性,潰瘍性大腸炎の3期分割手術の2期目の手術である直腸粘膜抜去術,H型回腸嚢肛門吻合術(IAA),回腸人工肛門造設を施行されていた.回腸人工肛門周囲に難治性の皮膚びらんを生じ,回腸人工肛門部皮膚潰瘍の疼痛コントロールのため入院となった.入院後,洗浄をはじめ状況に応じ多種多様の軟膏,被覆材料を用いてストーマケアを行った.その結果,回腸人工肛門周囲に発生した壊疽性膿皮症にともなう難治性皮膚潰瘍は上皮化し成功裏に3期目の手術を施行し,治療し得た症例を経験したので報告する.
  • 久留宮 康浩, 寺崎 正起, 土屋 政仁
    2005 年 58 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    48歳男性.主訴は肛門痛.2002年8月初旬より肛門痛が出現,肛門前方に腫脹をともない当院を受診した.内痔核嵌頓と術前診断し,緊急手術を行った.病理組織検査でverrucous carcinomaと診断された.経過観察していたが,腫瘍が再発した.治療法として化学放射線療法か,手術か,また手術を選択する場合には腫瘍が再発,増大しているため,マイルス手術を行うべきか否かを迷ったが,初回の病理診断から判断して局所切除で根治可能と考え,約5mmのsurgical marginをとり,再度,局所切除を行った.病理組織検査では初回手術と同様,verrucous carcinomaと診断された.再手術後15カ月の現在,腫瘍の再発を認めず経過観察中である.なお肛門機能は良好に温存されている.我々が検索し得た限り,尖圭コンジローマを発生基盤としない肛門部verrucous carcinomaの報告例はなかった.
  • 成田 和広, 後藤 学, 高村 光一
    2005 年 58 巻 2 号 p. 74-79
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性.下腹部痛,発熱,頭痛,嘔吐にて救急車にて救急外来を初診.両季肋部に圧痛を,腹部CT検査にて肝両葉に低吸収域を認め,肝膿瘍と診断し,超音波下に膿瘍ドレナージ術を施行した.入院後便への血液付着に気付き,精査にてS状結腸癌の診断となった.また上部消化管内視鏡検査にて胃体上部大弯にIIc病変を認め,生検にてgroup 4であった.開腹にて,肝外側と胃は強固に癒着,S状結腸癌は直腸に浸潤しており,胃全摘,肝外側区域合併切除,低位前方切除術を施行した.病理診断にても肝に転移所見はなく,膿瘍で矛盾しない所見であった.
    大腸癌に肝膿瘍を形成することは比較的まれであり,大腸癌から経門脈的に肝膿瘍を形成したと考えられた.胃癌を合併し,結腸癌が肝膿瘍の原因と考えられた症例を経験したので報告した.
  • 外山 栄一郎, 杉原 重哲, 米満 弘一郎, 鶴田 豊
    2005 年 58 巻 2 号 p. 80-83
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部に発生する悪性黒色腫は,比較的稀な疾患であり極めて予後不良である.今回われわれは,本症の手術後長期生存例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は59歳男性.検診の直腸指診で腫瘤を指摘され,大腸内視鏡検査後に生検依頼にて当科を紹介された.生検にて悪性黒色腫の診断を得て,腹会陰式直腸切断術を施行した.大腸癌取り扱い規約に準じると,SM, P0, H0, M(-), N(-), Stage I, CurAであった.病理組織像では黒褐色のメラニン顆粒を有する腫瘍細胞が粘膜筋板を越えて存在していた.術後は化学療法を行い,術後6年たった現在外来経過観察中である.
  • 大東 誠司
    2005 年 58 巻 2 号 p. 84-88
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    胃周囲リンパ節転移を契機に発見された横行結腸癌の1例を経験した.症例は84歳,女性.主訴は右上腹部痛,貧血.CTで膵頭部腹側に径6cm大の腫瘍性病変を認め,上部消化管内視鏡検査では胃幽門部から十二指腸にかけて壁外性の圧排所見があり,十二指腸では腫瘍が粘膜面に露出していた.下部消化管内視鏡検査では肝弯曲部に全周性の潰瘍性病変があり,生検では十二指腸と同様の中分化腺癌と診断された.手術は結腸右半切除,膵頭十二指腸切除を施行.結腸癌は深達度ss,幽門部の腫瘍は幽門下リンパ節(No.6)へのリンパ節転移と判明し,他に胃周囲リンパ節No.3,8a,12aへのリンパ節転移が陽性であった.肝弯曲部や上行結腸癌に関しては結腸動脈周囲に沿うリンパ流とは別に,膵頭部あるいは胃周囲リンパ節へ連続するリンパ流が報告されている.今回注目すべき点は,結腸所属リンパ節に転移はなく胃周囲リンパ節のみに転移巣を形成しており,今後リンパ節郭清を行ううえでも注意が必要である.
  • 照屋 剛, 宮里 浩, 与儀 実津夫
    2005 年 58 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肝膿瘍の原因と考えられた下行結腸癌の1例を経験した,症例は73歳・男性で,2年前よりアルコール性慢性膵炎にて加療中で,発熱と嘔吐と腹痛で入院となった.腹部CTと超音波検査にて肝右葉に約5×7cmの嚢胞性腫瘤を認めた.臨床経過や検査所見より肝膿瘍と診断し,抗生剤投与や経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD)を行った.貧血精査での注腸検査にて下行結腸にapple core signを認め,大腸内視鏡では潰瘍をともなう腫瘍を認め,生検で高分化型腺癌と診断された.肝膿瘍治療後に下行結腸切除術を施行した.腫瘍は2型で,ss, lyl, vl, n0, P0, H0, M(一), stage IIであった.肝膿瘍の診断にはCTや超音波検査が有用で,PTADは治療効果も高く有効であった.大腸癌が原因と考えられる肝膿瘍の報告は少なく,肝膿瘍の治療と並行して消化管の精査は重要であると思われた.
  • 増田 勉, 稲次 直樹, 吉川 周作, 高村 寿雄, 榎本 泰三, 内田 秀樹, 大野 隆, 園尾 広志
    2005 年 58 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    後腹膜に発生した脂肪肉腫は稀ではないが,傍直腸脂肪組織内に発生した脂肪肉腫の報告例は無い.また脂肪肉腫に対する治療後長期にわたり予後を観察した症例の報告例は少ない.今回術後8年間無再発生存している傍直腸脂肪組織内に発生した脂肪肉腫の一例を経験したので報告する.症例は34歳女性で,第2子出産の際,産婦入科医に直腸腫瘤を指摘されて来院.腫瘍は腹膜翻転部直下の直腸左側のいわゆる"pararectal space"に存在.術前に経皮針生検検査施行し,脂肪肉腫の診断を得た後に手術を施行した.周囲組織への浸潤を認めなかったので,腹会陰式直腸切断術は施行せず,摘出術のみとした.術後の化学療法,放射線療法は施行していない.文献的考察を加えて報告する.
  • 佐藤 幸一, 東 博, 西山 保比古, 大谷 剛正
    2005 年 58 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    過去7年間に手術を行った大腸mp癌52例を対象とした.腫瘍部を全割し,H.E染色標本で病理組織学的一般事項を観察した後,静脈侵襲を正確に同定するため,Elastic van Gieson染色も行った.mp内浸潤度は4段階に分類し,他の臨床病理学的因子との関連性を検討した.さらに,腫瘍先進部の所見に着目し,静脈侵襲との関係を検討した.
    占拠部位はS状結腸と直腸に多く存在した.2型は1型よりmp内浸潤度が深い傾向がみられた.しかし,他の臨床病理学的因子とmp内浸潤度との相関関係はみられなかった.再発は3例(5.8%)に認め,いずれも血行性転移であった.リンパ節転移は21.2%に認め,すべてn1までであり,大腸mp癌ではD2郭清が妥当と思われた.buddingや組織分化度変化を示す症例は静脈侵襲陽性率が高く,血行性転移高危険群であり,術後積極的に化学療法を考慮すべきと考える.
  • 角田 明良, 中尾 健太郎, 平塚 研之, 山崎 勝雄, 鈴木 直人, 古泉 友丈, 鈴木 研也, 保田 尚邦, 草野 満夫
    2005 年 58 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    科学的根拠に基づく結腸癌手術のクリニカルパス(CP)を作成した.CPの適応の要点は米国麻酔学会(ASA)分類1度と2度の定期手術症例である.CPの骨子は(1)術前後のインフォームド・コンセント,(2)術後胃管非留置,(3)硬膜外鎮痛法,(4)早期離床,(5)早期経口摂取,(6)第6病日退院,である,CP導入前の非CP群とCP導入後のCP群の各々42例を対象にし,臨床成績を比較検討した.年齢,性,併存疾患の比率,手術時間,出血量,術式の比率は各々両群問に有意の差はなかった.CP群は非CP群よりDukes Bが有意に少なかった.術後合併症の頻度は両群間に有意の差は認められなかった.術後入院期間の中央値は非CP群20日(8~100),CP群は6日(3~31)であり,CP群は有意に短期間(P<0.0001)であった.CPの導入により合併症の頻度を増加させず,術後の入院期間が短縮した.
  • 東 博, 辻仲 康伸
    2005 年 58 巻 2 号 p. 112-117
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    痔核術後の症例を対象として,術後疼痛管理を目的に硬膜外鎮痛法を行い,その有用性について検討した.使用薬剤,投与方法別に無作為に7群に分け患者記載によるアンケート調査を行った.症例数は0.25%bupivacaine (Marcain)間欠投与(B)28例,bupivacaine (Marcain)持続投与(CB)22例,bupivacaine (Marcain),morphine混合持続投与(CBM)22例,morphine持続投与(CM)21例,buprenorphine (Lepetan)持続投与(CBP)18例,eptazocine (Sedapain)持続投与(CE)14例,diclofenacsodium (Voltaren)坐薬投与のコントロール(CO)30例となった.結果として,硬膜外投与群すべてがCOに対して有意に高い鎮痛効果を示した(P<0.05).この中で最も疼痛制御効果の優れていたのはCBMであったが,副作用として排尿障害が多かった.悪心,嘔吐はCBPに多かった.総合的快適度は副作用の少なかったCEの評価が高かった.
    痔核術後疼痛に対する硬膜外鎮痛法の効果は高く,積極的に行うべきと考えられるが,臨床的にはeptazocine (Sedapain)持続注入法の利便性が示唆された.
  • 荒井 勝彦, 木村 英明, 小金井 一隆, 赤谷 美奈子, 杉田 昭, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
    2005 年 58 巻 2 号 p. 118-122
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    腸腰筋膿瘍を合併したCrohn病10例を経験した.男性が8例,小腸大腸型6例であった.膿瘍はCrohn病発症4年から13年後,平均24歳で発症し,右側が8例と多く,臨床症状は腰痛,下肢痛,歩行困難で,腸管皮膚瘻を3例に,水腎症を3例に合併した.治療法は全例に外科的治療を行い,3例は経皮的ドレナージ後に病変部腸管の切除術が行われ,他は一期的に病変部腸管切除と膿瘍ドレナージを施行した.術後,全例で合併症なく,臨床症状は短期間で消失した.自験例は本邦報告例に比べ,一期的手術が多かったが,抗生剤投与などの保存的療法で炎症反応が改善すれば,待機的な一期的手術が可能と思われた.本症は保存的治療あるいはドレナージ処置のみでは改善せず,病変部腸管切除が必要である.
  • 岡本 規博, 前田 耕太郎, 丸田 守人
    2005 年 58 巻 2 号 p. 123-125
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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