本邦では,大腸癌の病期分類として日本大腸癌取扱い規約(以下JGR),欧米ではAmerican Joint Committee on Cancer and the Union Internationale Contrele Cancer(AJCC/UICC)TNM(以下TNM)分類が広く用いられている.本研究はDukesC大腸癌患者においてJGRとTNMのリンパ節分類と予後との関係を明らかにし,いずれの分類が妥当であるかを検証することを目的とした.治癒切除が施行されたDukesC大腸癌患者386例を対象とした.転移リンパ節の解剖学的位置にもとずいたJGRによるn-stage,リンパ節転移個数による新TNM分類のN-stage,そして,既存の臨床病理学的因子(性別,年齢,腫瘍径,占居部位,組織型,深達度,リンパ管侵襲,静脈侵襲)について,多変量解析を用いて予後規定因子につき検討した.単変量解析では,腫瘍径,深達度,リンパ管侵襲,静脈侵襲,JGR(n-stage),TNM(N-stage)の6因子で5年生存率に有意差を認めたが.多変量解析ではTNMのリンパ節転移分類のみが,DukesC大腸癌患者の独立した予後規定因子であった(p<0.0001,odds比:2.876).系統的リンパ節郭清を施行したDukesC大腸患者において,TNMのN-stage分類は,解剖学的な位置によるJGRのn-stage分類より予後を予測する上で,妥当な分類と考えられた.
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