大腸癌の周術期・術後の多発癌・重複がん検索の必要性・妥当性を検討することを目的に,「大腸癌術後フォローアップ研究会」参加14施設における1991~1996年の大腸癌治癒切除症例5,358例を対象として,多発癌・重複がんの頻度と特徴を調査した.
同時性重複がんの有病率は3.5%であった.そのうち胃癌が約半数を占め,その有病率は1.6%であった.術後異時性重複がんは203例(3.94%)であり胃癌が最多であった.
同時性胃癌の頻度は検診での胃癌発見率(0.14%)よりも高いことから,術前上部消化管内視鏡検査の有用性が示唆されたが,医療経済的な妥当性については議論の余地がある.大腸癌罹患歴が重複がん発生のリスク因子であるとの結果は得られなかったことから,大腸癌術後フォローアップシステムに重複がん検索を加える必要はなく,一般のがん検診を勧めることが妥当と考えた.一方,大腸癌術後は異時性多発癌の発生が高く,定期的検索が必要と考えた