抄録
症例は84歳,男性.心不全にて当院受診した.心不全コントロール後,冠動脈造影検査を行ったところ,単冠動脈の3枝病変であった.単冠動脈は右冠動脈洞から起始し,直後に,右冠動脈,左前下行枝,左回旋枝に分岐していた.左前下行枝は肺動脈の前面を走行し,左回旋枝は大動脈と肺動脈の間を走行していた.3枝病変に対して,冠動脈バイパス術を行った.術中の大動脈エコー,肉眼所見で,冠動脈の分岐,走行が確認された.単冠動脈は稀な疾患で,しばしば他の心奇形を合併している.今回我々は心不全で発症した,合併心奇形のない高齢者単冠動脈の3枝病変症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.