抄録
1994年4月から2012年3月までに施行した単独冠動脈バイパス術(CABG)1462例中,人工心肺を使用したCABG(ONCAB)は590例,人工心肺を使用しないCABG(OPCAB)は872例であった.これらをpropensity scoreを用いそれぞれ370例について後ろ向きに検討した.両群間比較(ONCAB群 vs OPCAB群)において,術中因子では手術時間の短縮(5.5 h,4.9 h P<0.01),末梢バイパス吻合数(3.1枝,3.3枝P<0.03),術後因子では術後出血・再開胸術(P=0.008),心房細動の発生抑制(P=0.046)にOPCAB群に有用性を認めたが,術後脳梗塞,周術期心筋梗塞,術後新たに透析を要した腎不全,術後30日以内の死亡率に有意差は認めなかった.遠隔成績では15年の観察期間で全死亡率,心死亡率,心事故回避率に両群間に有意差を認めなかった.