抄録
チタン水素化物は, その厚さが一定の厚さに達すると破壊を起こしやすい. しかし水素化物の形態や力学特性はよく知られていない. 本研究は水素化物の形態や破壊タイプを調べることを目的とした. 純チタン (Gr.1) やチタン (Gr.7) では, シェブロン形状の板状水素化物が表面に生成することがわかった. 板状水素化物は, その成長中や変形によって3タイプの損傷, すなわち, 水素化物内のき裂, 層剥離 および板状水素化物のせん断型破壊を受けることがわかった. 次に, Gr.1とGr.7チタンに生成される水素化物の真応力・ひずみ曲線を, 2圧子押込み試験法によって推定し, FEMを用いて押込み中に生成するモードI型破壊を起こす限界ひずみを推定した. Gr.1チタンに生成する水素化物の破壊強さとひずみは, それぞれ566MPaと4.5%に推定された. Gr.7に生成される水素化物のそれらは526MPaと16%に推定された. 真応力・ひずみ曲線の塑性不安定条件から推定される破壊ひずみは, FEM解析で推定されるひずみの約1/2になったが, チタン水素化物はそれなりの靭性すなわち塑性変形能を有していることが推定された.