Zairyo-to-Kankyo
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論文
Comparative XPS Study of Silver and Copper Surfaces Exposed to Flowing Air Containing Low Concentration of Sulfur Dioxide
Masamitsu WatanabeHiroshi AndoTakao HandaToshihiro IchinoNobuo Kuwaki
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2007 年 56 巻 1 号 p. 10-15

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抄録

二酸化硫黄は金属の大気腐食に影響を与える典型的なガスである.銀及び銅の大気腐食に及ぼす二酸化硫黄の影響についてはこれまで多くの研究がなされてきたが,初期腐食挙動についてはほとんど知見が得られていない.本研究では X 線光電子分光(XPS)により低濃度二酸化硫黄(18 及び 148 ppb)を含む大気に暴露した銀及び銅板上の硫黄の化学状態を分析した.いずれの二酸化硫黄濃度においても XPS スペクトルの形状は同一であり,元素の化学状態は二酸化硫黄濃度に依存しないことを示していた.また,銀板上と銅板上の硫黄の化学状態は異なることを見い出した.銀の場合には,bisulfite,S2O52-, S2O32-, S2- に由来する 3 つのピークが観測された.bisulfite は表面吸着水への二酸化硫黄の溶解に,その他の成分は亜硫酸の還元に由来するものと考えられる.一方,銅の場合には bisulfite に由来する成分のみが観測された.この成分も表面吸着水への二酸化硫黄の溶解に由来する.銀板上と銅板上に存在する硫黄の化学状態の差異は,bisulfite の還元を妨害すると思われる酸化物の存在に起因する.

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© 2007 公益社団法人 腐食防食学会
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