材料と環境
Online ISSN : 1881-9664
Print ISSN : 0917-0480
ISSN-L : 0917-0480
論文
ステンレス鋼の海水系環境中におけるすきま腐食深さの実験室的評価
松橋 亮松岡 和巳金子 道郎
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 56 巻 2 号 p. 62-69

詳細
抄録
海水系環境中における各種ステンレス鋼のすきま腐食発生後の成長性すきま腐食の進展性を実験室における定電位試験によって検討し,最大すきま腐食深さの時間依存性から板厚貫通時間 (穴あき時間) の推定をおこなった.
ステンレス鋼の耐すきま腐食性はCl濃度の増加とともに劣化し,いずれのステンレス鋼ともおよそ100 ppm 以上のCl濃度ではすきま腐食が自然生起し,成長性のすきま腐食が進展する.その進展性を示す最大すきま腐食深さ:Dmaxは時間に対してDmaxA·tmの関数で近似されるべき関数型の挙動を示す.式中の定数:A 値は 1 h 経過後の最大すきま腐食深さに相当しCl濃度の増加とともに増大するが,べき数m値はいずれのステンレス鋼ともにCl濃度にほとんど無関係にm=0.3~0.5 の値を示した.このmの示す値は,最大深さを示す腐食部において特定の金属溶解形態と金属溶解反応の律速段階を仮定することによりある程度説明できる.また,成長性すきま腐食がステンレス鋼の板厚方向に進展し板厚貫通に至るまでの時間 (穴あき時間) は例えば,19 ppmのClを含む50℃の環境中においては板厚が1 mmの場合,SUS304鋼で約4 y,SUS316L鋼で21 yおよびSUS329J4L鋼で66 yの穴あき時間を要することが推定された.さらに,穴あき時間におよぼす電位の影響を検討した結果,SUS304鋼では300から440 mVの電位範囲では穴あき時間はほぼ一定値を示すことなどが明らかになった.
著者関連情報
© 2007 公益社団法人 腐食防食学会
前の記事 次の記事
feedback
Top