Zairyo-to-Kankyo
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論文
海水中に暴露された鋼材のマクロセル腐食現象の解析
松岡 和巳山本 正弘五戸 清美
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2007 年 56 巻 3 号 p. 99-105

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抄録

海洋に建造された鋼構造物において,しばしば干潮面 (L.W.L.) 直下で局所的に大きな腐食が観測される.しかし,この部位に腐食極大が現れる理由に関してはあまりよく分かっていない.そこで,この部分の腐食現象を明らかにすることを目的にモデル的な試験材により腐食量とマクロセル電流の測定を行うことで検討した.その結果,L.W.L直下部の腐食極大は干満帯だけでなく,海中部の影響も受けることが分かった.干満帯を塗装すると,この腐食の極大は観察されなくなる.また,海中部の鋼材の長さが短いものより長い場合に,この腐食極大が顕著となることが分かった.
マクロセル電流の測定により,干潮から満潮に変わるときに干満帯をカソードとした大きなマクロセル電流がL.W.L直下部より流れること,その後L. W. L直下部は干潮になってもより深い海中部をカソードとしたアノード電流が流れ続けることが分かった.この理由として,満潮時に大きく分極されたL.W.L.直下部のさび層が干潮時の間にゆっくりと自然電位に戻る.このため,次に来る満潮時までアノードとなり,海中部をカソードとしたマクロセルを形成し続けることを繰り返すためと考えられる.

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© 2007 公益社団法人 腐食防食学会
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