材料と環境
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56 巻, 3 号
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展望
解説
論文
  • 升岡 正, 黛 正己, 新井 拓, 谷 純一
    2007 年56 巻3 号 p. 93-98
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    冷間圧延により圧下率を10%から40%まで変化させた低炭素ステンレス鋼SUS316L材を用いてCT試験片を製作し,BWR炉水模擬環境におけるSCCき裂進展試験を実施した.試験では一定荷重を与えコンパクト型 (1 T-CT) 試験片の初期応力拡大係数が20 MPa√mあるいは30 MPa√mになるようにした.マイクロビッカース硬さ (平均値:Hv) の増加に伴い,き裂進展速度は増大する傾向を示し,Hv 250以上では熊谷らによる加工硬化材の割れ進展速度暫定線図より大きな進展速度を示した.しかし,これら硬さ (圧下率) の大きい試験片の割れ形態はシュラウド熱影響部などに生じたSCC損傷と異なり粒内型SCCが支配的であった.一方,Hv 230 (圧下率 10%) の条件の試験片ではほぼ完全な粒界割れとなり,実機に生じたSCCと同様の割れ形態であった.これらの結果から,冷間加工材に対するき裂進展試験を行う際には,破面形態を十分に考慮し,実機と同等な破面を呈する加工度の試験片を用いる必要性が示唆された.
  • 松岡 和巳, 山本 正弘, 五戸 清美
    2007 年56 巻3 号 p. 99-105
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    海洋に建造された鋼構造物において,しばしば干潮面 (L.W.L.) 直下で局所的に大きな腐食が観測される.しかし,この部位に腐食極大が現れる理由に関してはあまりよく分かっていない.そこで,この部分の腐食現象を明らかにすることを目的にモデル的な試験材により腐食量とマクロセル電流の測定を行うことで検討した.その結果,L.W.L直下部の腐食極大は干満帯だけでなく,海中部の影響も受けることが分かった.干満帯を塗装すると,この腐食の極大は観察されなくなる.また,海中部の鋼材の長さが短いものより長い場合に,この腐食極大が顕著となることが分かった.
    マクロセル電流の測定により,干潮から満潮に変わるときに干満帯をカソードとした大きなマクロセル電流がL.W.L直下部より流れること,その後L. W. L直下部は干潮になってもより深い海中部をカソードとしたアノード電流が流れ続けることが分かった.この理由として,満潮時に大きく分極されたL.W.L.直下部のさび層が干潮時の間にゆっくりと自然電位に戻る.このため,次に来る満潮時までアノードとなり,海中部をカソードとしたマクロセルを形成し続けることを繰り返すためと考えられる.
  • 八代 仁, 千葉 俊朗
    2007 年56 巻3 号 p. 106-111
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    はじめに種々の濃度のFeCl3水溶液に浸漬されたSUS304ステンレス鋼の孔食挙動について,電位変動を調べた.Fe3+濃度が比較的低い場合,カソード反応の分極によって生じる典型的な電位変動が観察された.2 番目に内部電流を評価する目的で,アノード (Fe3+を含まない塩化物溶液に浸したSUS304ステンレス鋼) とカソード (Fe3+を含む溶液に浸したSUS316ステンレス鋼) を短絡させた.次にFeCl3溶液中におけるSUS316ステンレス鋼のカソード特性を調べた.このデータはコンピュータに入力され,ポテンショスタットによって測定されるアノード電流が常にその電位における入力されたカソード電流と大きさが等しくなるように制御するプログラムが作られた.最後にこのポテンショスタットを用いて,Fe3+を含まない塩化物溶液中でSUS304ステンレス鋼をアノード分極した.これらの3種類の試験はいずれもほぼ等しい電位変動を与えたことから,「人工カソード」の概念の妥当性が示されたといえる.
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