材料と環境
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論文
粗製リン酸によるステンレス鋼の変色挙動
松橋 亮末次 和広田所 裕鈴木 亨
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2007 年 56 巻 5 号 p. 208-214

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抄録
粗製リン酸を積載するケミカルタンカーのタンク用材料の表面が黒色に変色する現象(黒変化現象)を明らかにする目的で,種々のステンレス鋼の粗製リン酸中での腐食試験および種々の表面分析を実施した.その結果,粗製リン酸中にステンレス鋼を暴露すると,気相部の金属表面は黒く変色し,液相部では全く腐食や変色を生じないことが明らかになった.ここで気相部の変色部分直下に軽微な肌荒れ様の全面腐食が生じているが,いずれの材料とも腐食速度は0.1 mm/y以下であり実用上全く問題ない.しかし,実際のケミカルタンクの運用を考慮すると,他のケミカルへの不純物混入などの汚染が懸念されるためタンククリーニングをする必要性がある.また,黒変化現象は粗製リン酸中から主としてフッ化物系ガスが発生し,これが金属表面と反応してできた腐食生成物が黒色に見えるために起こる.黒色皮膜の実態はFe, Cr, Niなどの金属酸化物かフッ化物もしくはその両方から成るものと考えられ,変色を防止または抑制するためには,粗製リン酸中から発生するフッ化物系ガスを除去,希薄化する必要があり,そのための手法として不活性ガスによる気相ガス置換法が有効であることなどについて述べる.
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© 2007 公益社団法人 腐食防食学会
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