交流架空送電線や交流電気鉄道に近接して埋設されたパイプラインにおいては,送電している交流電流が周囲に形成する磁場に起因した電磁誘導の影響による交流迷走電流腐食リスクがあり,その対策としてパイプラインの低接地措置が一般的に実施される.ここで,パイプラインに発生する電磁誘導レベルを埋設する以前に予測することは,交流迷走電流腐食リスク評価および最適な低接地システムの設計に有効である.そこで本報では,磁気センサを用いた磁束密度計測に基づく電磁誘導レベル予測手法について,理論検討およびフィールド試験を行った.理論検討の結果,交流架空送電線の周囲に形成される磁束密度とパイプラインの電磁誘導レベルの関係式を導出した.また,フィールド試験により本関係式の妥当性を実証するとともに,磁気センサを用いた磁束密度計測により電磁誘導レベルを予測できることを明らかにした.本手法は,パイプラインが複数の送電線と複雑な位置関係で近接して,電磁誘導レベル予測が困難な場合についても適用できる可能性がある.