抄録
高温塩化物環境におけるオーステナイトステンレス鋼の腐食特性に及ぼす合金元素の影響を高温腐食試験により検討した.この試験は,500~700℃の大気中加熱と NaCl水溶液浸漬を繰り返す試験である.主要な腐食成分は Feであり,主な腐食生成物はα-Fe2O3であった.Crの腐食生成物の 70%以上は,試験片表面上にCr2O3あるいは (Fe, Cr, Ni)3O4として存在し,Cr2O3に保護性は認められなかった.残りのCrの腐食生成物はNaCl溶液中に溶出した.Siは,母材/腐食生成物界面に安定なSi酸化物として濃縮することによって,耐食性を顕著に向上させた.NiとMoも耐食性に有効な元素であった.