抄録
非鋭敏化低炭素316ステンレス鋼のSCC挙動について検討した.実験室的に形成した表面硬化層(HV=300)の残留応力深さ方向分布をSPring-8にて測定した.その結果,900 MPaを超える引張残留応力が最表面に局在することが定量的に分かった.さらに,応力制御したすき間付き4点曲げ試験を高温水環境(561 K,200 ppb SO42–,溶存酸素 8 ppm)にて実施した.高温水環境においてもSCC発生には限界応力値が存在することが明らかになり,本実験条件では600 MPaと高い値であった.表面加工による引張残留応力はSCC発生において重要な因子であることが示唆された.