すきま腐食成長の微生物による助長要因を明らかにする目的で,自然海水に暴露したType329J4L鋼に対してカソード電流の測定ならびに微生物の分析を行った.夏季においては,0.2 V vs. SHEで測定されたカソード電流密度は,0.1μA/cm
2未満の値から上昇し,2μA/cm
2を超えるに至った.しかしながら,それ以外の季節においてはカソード電流密度に顕著な上昇は認められず,その値は 0.1μA/cm
2未満にとどまった.16S rRNA遺伝子の解析結果から,カソード電流の2μA/cm
2を超える値への上昇が認められた試験片表面のバイオフィルムに特有であった微生物は,
Algibacter属および
Gammaproteobacteria綱に属する真正細菌であることが判明した.存在した全種類の細菌数は,カソード電流増大に寄与しなかった.したがって,腐食速度上昇の原因となるカソード電流の増大は主に特異な細菌が作用することによって誘引され,
Algibacter属もしくは
Gammaproteobacteria綱の真正細菌がカソード電流を増大させる働きを持つ可能性があると結論づけられる.
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