抄録
高抵抗環境における外部電源法電気防食では防食の適否判定に復極値が用いられることが多い.復極値とはiR降下を補正した正味のオン電位と自然腐食電位の差である.このとき,防食オンからオフに切り替えた直後に防食対象物が示す電位はインスタントオフ電位とよばれ,iR降下を補正した正味のオン電位とみなせるものであり,また復極値測定の基準ともなる重要な値である.コンクリート内鉄筋の防食電流オフに伴う電位変化では,iR降下から電荷移行過程への移行は数ミリ秒内に完了するため,鉄筋のインスタントオフ電位測定は高速な読み取りが要求される.高速測定が可能であり,かつ現場測定に対応できる新しいインスタントオフ電位計の開発を行った.この電位計は (a) MOSスイッチの駆動とAD変換のトリガーのためのパルス発生機構,(b) 任意のオン/オフ時間比 (デューティ比) で防食電流をスイッチングするための機構,(c) スイッチングパルスに同期して高速AD変換およびデータ記憶・演算するための機能を有していて,マイクロプロセッサにより統合的に制御されている.インスタントオフ電位測定におけるノイズは商用電源を主因とするが,これを平均化により消去する際の最適化手法が示された.データ採取の周期,タイミング,デューティ比の適切に設定することにより電源起因のノイズが大幅に削減されることが示された.測定されたインスタントオフ電位は1.6秒ごとに更新・表示できた.この電位計をコンクリート試験体および実橋梁での測定に適用し,その妥当性を確認した.