抄録
化学プラントで生じた水素の関与した2つの事例を紹介する.
一つ目の事例は,硫酸環境でのタンタルの割れである.この事例では,運転中にTaに水素吸収が生じた.水素濃度と機械的特性の関係,脱水素熱処理の可能性および水素濃度の非破壊的評価方法に関して検討した.
二つ目の事例は,モリブデンを含むニッケル基合金の割れである.割れ発生の支配要因を,電位制御下の定ひずみ速度試験で検討した.その結果,製作時の熱履歴による規則化と,運転環境で生じた水素吸収が割れ発生に支配的に関与していることが明らかとなった.
これらの検討より,真の原因解析が適切な対応を取るために大切であることが再認識された.