抄録
各種 Ni-Cr-Mo(-Ta)系合金溶接棒を用いて形成した突合せ溶接部を含むNi基合金試験片の腐食すきま再不動態化電位(ER,CREV)を高温高濃度NaCl溶液中で測定することにより,溶接部における耐すきま腐食性を評価した.溶接線を含む試験電極のER,CREVは,すきま腐食が主に溶接部に発生するという条件下で,溶接部のER,CREVと見なすことが出来た.この際,溶接部の耐すきま腐食性は合金元素が希薄となる樹芯組成に支配され,耐すきま腐食性が低下することがわかった.溶接部のER,CREVと樹芯組成から算出される PRE(Ta)=[%Cr]+3.3 ([%Mo]+0.5 [%W])+7.7 [%Ta]の相関直線は,母材のER,CREVとPRE(Ta)の相関直線と一致することが確認された.温度を上げるなど,より厳しいすきま腐食環境では,共金材で溶接したAlloy 22は,溶接部と母材のER,CREVは同じ値となった.溶接部の耐すきま腐食性は樹芯組成支配から平均的な化学組成支配に変化することが示唆された.