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論文
金属鉄を電子供与体として利用可能なメタン生成古細菌(MPA)と硫酸塩還元菌(SRB)の共存による鉄腐食促進作用
伊藤 公夫若井 暁鶴丸 博人飯野 隆夫森 浩二内山 拓三木 理原山 重明
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2011 年 60 巻 9 号 p. 402-410

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抄録

嫌気性条件(N2(80%)+CO2(20%))の海水培地において,金属鉄を電子供与体として,CO2を電子受容体かつ炭素源として利用可能なMPAは,純鉄試験片を腐食した.主要な腐食生成物はFeCO3であった.このMPAが,同様に金属鉄を電子供与体として利用可能なSRBと共存することで,MPA単独の場合よりも腐食が約2.3倍促進されることが明らかになった.MPAとSRBが共存する場合の腐食生成物も,MPA単独による腐食生成物と同様にFeCO3であった.
また,嫌気性条件(N2(80%)+CO2(20%))での腐食速度と,引き続く好気性条件(空気下)での腐食速度を比較した結果,MPA単独,あるいは,MPAとSRBが共存する場合の腐食速度は,嫌気性条件(N2(80%)+CO2(20%))の方が高い値となった.
本研究で腐食試験に使用したMPAとSRBは同一の原油タンクのスラッジから単離されたものである.油井など高濃度のCO2とClが存在する実際の嫌気性腐食環境においては,金属鉄を電子供与体として,CO2を電子受容体や炭素源として利用可能なMPAと同じく金属鉄を電子供与体として利用可能なSRBが共存している可能性も想定される.したがって,金属鉄を電子供与体として利用可能なMPAとSRBの共存による微生物腐食に対しても留意すべきと考えられる.

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© 2011 公益社団法人 腐食防食学会
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