2012 年 61 巻 3 号 p. 105-108
原子力発電プラントに使用されているAlloy690を長期間使用すると,Ni2Mなどの金属間化合物が長範囲規則化あるいは析出する恐れがあることが指摘されているが,これを実験的に評価することは困難である.本研究ではThermo-Calcを用いた熱力学平衡計算により,8種の添加元素についてAlloy690中のNi2Mの相安定性に及ぼす影響を評価した.計算の結果,Fe,Cr,Ti,Siの添加量はNi2Mの相安定性に影響を与え,特にFeとCrが及ぼす影響が大きいが,Mn,Cu,B,Cの添加量はほとんど影響を与えないと推察された.計算結果に基づき,Fe添加量をゼロにすることによりNi2Mの相安定性を高めた合金を実際に作製した.作製した合金は773 K(500℃)以上においてもNi2Mが安定相として析出すると考えられるため,本合金を用いたNi2Mの析出挙動や,その影響の実験的評価が期待される.