2013 年 62 巻 1 号 p. 3-8
通信線路設備は,鉄鋼などの金属で構成されており,屋外に設置されるものも多い.三宅島で長期間にわたる暴露試験を試みたのは,鋼材の腐食を防ぐために施した防食被覆が,沿岸部という金属には過酷な地域において局部的な腐食を抑えることができるのかを調べるためである.対象は,通信ケーブルを電柱によって地上に架渉するために使用されているつり線とした.つり線を構成する鋼より線には,防食対策のために,Zn被覆が利用されてきた.しかしながら,海岸地域において,Zn被覆鋼より線の腐食が認められた.これは,海から飛来してくる海塩粒子が鋼より線の表面に付着することが原因であると考えられている.そこで,海塩粒子から防食するために,Znより耐食性の高いAlが用いられるようになったが,海岸近傍においてはAl被覆においても特定箇所で腐食が起こる事態となった.これまでに鋼より線の防食被覆として使用されてきたZn,Al被覆を含めた3種類の被覆を施した鋼より線を23年間三宅島において暴露試験を実施し,防食対策として犠牲アノードテープを巻くことが有効であることを明らかにした.