抄録
不動態皮膜破壊に及ぼす陰イオンの影響を評価するために,破壊に要する時間tbdを0.1 Mの種々の陰イオンの水溶液中における不動態化Fe電極について測定した.log tbdと陰イオンの塩基の硬さHの間の関係を硬いおよび軟らかい酸塩基の法則に基づいて考察した.この法則に従って,陰イオンを4つのグループ,硬い塩基,酸化性硬い塩基,軟らかく硬い塩基および軟らかい塩基に分類した.前3者のグループでは,log tbdはHと共に増加したが後者では逆にHの増加と共に減少した.前者の関係は安定な硬い酸-硬い塩基の相互作用のための皮膜内部への陰イオン侵入の抑制によって説明できた.しかし,軟らかい塩基の陰イオングループでは,関係をこの相互作用で説明できなかった.