2014 年 63 巻 10 号 p. 528-534
低合金鋼を用いて,45 MPaの水素ガス環境における水素吸収に及ぼす試験温度と塑性変形の影響と,これらが水素脆化に及ぼす影響を検討した.水素は常温では無ひずみの試験片には吸収されなかったが,塑性変形が水素吸収を促進した.50℃以上では温度上昇に伴い水素吸収量は増加した.常温高圧水素ガス環境において,低ひずみ速度引張試験(Slow Strain Rate Test, SSRT)の方が,4点曲げ試験(Four Point bend Test, 4PBT)よりも厳しい結果となった.この理由は,SSRTでは水素ガス中で動的塑性変形が加えられることで,水素吸収が促進されたことと推定された.150℃の高圧水素中に曝露した後の4PBTでは割れはほとんど起こらなかった.冷却中の水素の逃散や,水素が高温において鋼中で安定化することがこの理由と考えられた.