抄録
超高純度310ステンレス鋼にリンを添加した材料を用いて過不働態におけるステンレス鋼の粒界腐食に及ぼすリンの影響について調査した.粒界腐食深さ分布の測定や,3次元アトムプローブによる粒界部の元素分析を行った結果以下のことが分かった.リンの添加により粒界腐食が発生し,600℃の熱時効処理によって粒界腐食速度は増加した.粒界腐食の軽微な粒界ではリンの濃縮は確認されず,粒界腐食の激しい粒界には幅約5 nmのリンとクロムの偏析層が確認された.これらのことから過不働態域におけるリン添加310ステンレス鋼の粒界腐食にはリンとクロムの粒界偏析が影響していると考えられる.