抄録
ステントやコイルなどの体内留置医療機材として形状記憶合金の利用が拡大している.本論文では生体用機器に実用されているNiTi と,およびさらなる安全性の面から,今後NiTiに代わる材料として注目されているNiなどの生体アレルギー元素を含まないNiフリー生体用形状記憶Ti合金の生体環境での腐食挙動について,とくに1990年以降に公表された論文のデータを総括することとした.現状として,どちらの合金も生体用として耐食性に大きな問題は無いが,両者を比べるとNiフリー生体用Ti基形状記憶合金の耐食性方がNiTiのそれよりやや良いと判断できる.これより,耐食性の面でもより安全なNiフリー生体用形状記憶チタン合金のさらなる開発が望まれる.