2014 年 63 巻 5 号 p. 325-328
高耐食性Ti添加フェライトステンレス鋼において,Ti炭窒化物が孔食の起点となり得ると報告されてきた.しかし,Ti炭窒化物に関する孔食発生前後の観点での観察例はほとんどない.そのため,Ti炭窒化物周辺の孔食発生挙動の理解は未だ不十分である.そこで本研究は,定電位型溶液中AFM観察を行うことによりTi炭窒化物周辺の孔食発生挙動を明らかにすることを目的とした.その結果,圧延や研磨によりTi炭窒化物 / 素地境界に形成された深さ数十nm,幅数百nmのすき間を起点に孔食が発生することを明らかにした.そして時間の経過と共に,孔食は素地側の深さ方向に進展した.