Zairyo-to-Kankyo
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解説
アルミニウム合金の高温水中および乾湿繰り返し雰囲気における腐食
―塩化物イオン,Cu2+イオンおよび溶存酸素濃度並びにインヒビター添加の効果―
千葉 誠中山 雄貴平賀 拓也斎藤 嵩柴田 豊高橋 英明
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2014 年 63 巻 8 号 p. 449-458

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抄録

本稿においては,高温の水溶液浸漬実験および乾湿繰り返し実験により調べられた,高純-Al,1050-,3003-,4043-Al合金の腐食におけるCu2+イオン,Clイオン,溶存酸素およびインヒビターの役割について解説する.Clイオンは,Fe‐偏析相およびSi-偏析相の上に生成する酸化皮膜を不安定にし,その結果それらが局部カソードとして作用し,腐食が促進される.Cu2+イオンを含む溶液中においては,Cu2+イオンが還元されてCu粒子としてAl相およびFe-偏析相上に析出し,この析出Cu粒子が局部カソードとして作用することにより,腐食が大きく促進される.ClおよびCu2+イオンの両者を含む溶液中においては,Cu粒子がAl相およびFe-偏析相ばかりでなく,Si-偏析上にも析出し,腐食は相乗的にさらに大きく促進される.
Cu2+イオンを含む溶液にインヒビターを添加すると,薄いSiO2皮膜の形成によりCu粒子の析出が抑制され,防食率は大きく向上するが,Clイオンを含む溶液中では,溶液のpHの上昇により,その効果はあまり大きくない.Clイオンを含む液滴を用いた乾湿繰り返し実験から,液滴端部では大きなピットが生成するが,中央部では浸漬実験と類似の腐食形態を示すことがわかった.この大きなピットの生成は,試料が濃厚NaCl溶液と長時間接触するためおよび薄い液膜を通しての酸素の供給が容易であるためと推察できる.

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© 2014 公益社団法人 腐食防食学会
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