抄録
不動態化Fe電極上を覆った超薄高分子皮膜の作製に必要な時間を短縮するために,電極に吸着した16-ヒドロキシヘキサデカン酸イオンHO(CH2)15CO2-の自己組織化膜を1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン(C2H5O)3Si(CH2)2Si(OC2H5)3とオクチルトリエトキシシランC8H17Si(OC2H5)3を用いて修飾した.さらに,不動態化し,高分子で覆った電極を0.1 M NaNO3中で処理し補修した.不動態皮膜破壊までの時間tbdと防止率P(%)を0.1 M KClO4,0.1 M NaNO3,0.1 M Na2SO4および0.1 M NaCl中に長時間浸漬した時の開回路電位のモニターと繰り返し分極測定により求めた.tbdの値はそれぞれ57.4,>240,19.2および9.0 hであった.不動態皮膜破壊は高分子皮膜の被覆と補修処理によって非常に抑制された.これらの溶液中におけるPの値はtbd以前は99.9%以上と非常に高く,不動態皮膜破壊が起こらない限り,地金Fe腐食の防止は電極を補修した不動態皮膜と高分子皮膜で覆うことで達成できることを示した.