抄録
冷却水処理におけるクロム酸塩の代替として開発された無毒性インビター技術を概観した.ポリリン酸塩やホスホン酸塩は母材金属イオンと反応して防食皮膜をアノード部に形成する.一方,それらは濃度に応じて亜鉛イオンやカルシウムイオンと反応してカソード部に沈殿し防食皮膜を生成する.スケール防止剤として使用されるアクリル酸系ポリマーやマレイン酸系ポリマーは炭素鋼に対するカソードインヒビターの効果を向上させ,また冷却水の濃縮倍数を増大させてリン酸塩の総排出量の低減を可能にする.今後,グリーンインヒビターやシリカ系スケール防止剤,薬品を用いない水処理装置などの開発が期待されている.