2015 年 64 巻 5 号 p. 183-187
ステンレス鋼被覆と電気防食を併用した海洋鋼構造物において,電気防食不良が引き起こす腐食損傷リスクを評価するためには,ステンレス鋼に接触した炭素鋼の腐食速度が,異種金属接触腐食によってどの程度促進されるかを把握することが不可欠である.そこで本研究は,炭素鋼に接触するステンレス鋼の面積比が炭素鋼の腐食挙動に与える影響を明らかにすることを目的とした.試験の結果,炭素鋼の腐食速度はステンレス鋼の接触によって促進されるが,腐食促進の程度は面積比から予測されるよりも格段に小さかった.また,炭素鋼と接触した状態で浸漬したステンレス鋼の表面にはエレクトロコーティングが形成されていた.エレクトロコーティングは,ステンレス鋼表面への溶存酸素の拡散とカソード反応である酸素還元反応を抑制していると考えられる.