材料と環境
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-第61回材料と環境討論会 速報論文特集-
恒温硫黄蒸気環境の銀の硫化挙動におよぼす銀表面温度の影響
稲葉 康介石川 雄一酒井 潤一
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キーワード: , 硫黄蒸気, 硫化物, 温度, QCM, 対流
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2015 年 64 巻 5 号 p. 188-192

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抄録
本研究は硫黄蒸気環境の銀の硫化挙動におよぼす銀表面温度の影響について検討した.銀の硫化による質量変化の測定にはQCMを用いた.密閉系のデシケータ内に硫黄源として硫黄華S8を設置し,真空蒸着により銀試料を成膜したQCMを暴露した.一定温度T1に制御した恒温槽内にデシケータを設置し,アルミ箔ヒータにより銀表面温度T2を制御した.雰囲気温度から飽和硫黄蒸気圧pT1)を算出し,環境中の硫黄分子濃度を決定した.銀表面を加熱しないT1T2の場合,腐食速度はT1で決まる飽和硫黄蒸気圧に比例した.T1T2の場合,飽和硫黄蒸気圧が8.3,24 mPaではT2の上昇に伴い,腐食速度は増加した.一方で,飽和硫黄蒸気圧が2.6 mPaではT2によらず腐食速度はほとんど一定であった.これは,系内に銀表面温度上昇に起因する対流が生じ,硫黄分子の移動が促進され,銀表面に到達する硫黄分子が増加することで腐食速度が増加したことによると考えられる.また銀表面温度上昇時に発生する自然対流の大きさと飽和硫黄蒸気圧の値が腐食速度の増加率に影響する.
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© 2015 公益社団法人 腐食防食学会
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