抄録
オーステナイト系ステンレス鋼製の熱交換器ニッケルろう付け部の耐食性を調べるために,ステンレス鋼SUS316LおよびニッケルろうBNi‐5の電気化学的測定を行った.0.06 mol/L NaClおよび0.06 mol/L Na2SO4水溶液中において,室温および80℃下でSUS316LとBNi‐5の自然腐食電位,ガルバニック電流を測定した.80℃のNaCl溶液中におけるBNi‐5の自然電位は室温時のそれよりも低下するが,SUS316Lの自然電位は室温と80℃下でほとんど差は生じない.NaCl溶液中でのSUS316Lの自然電位はBNi‐5のそれよりも貴であった.80℃のNaCl溶液中におけるSUS316LとBNi‐5との電位差は最大約0.4Vであった.NaCl溶液中でSUS316LとBNi‐5とのガルバニック対に流れるガルバニック電流は,室温ではほぼゼロであり,80℃では最大約0.2 μA/cm2であった.Na2SO4溶液中ではSUS316LとBNi‐5との間に室温,80℃下においてガルバニック電流はほとんど流れなかった.BNi‐5とSUS316Lとのガルバニック腐食は,高温の塩化物イオンを含む溶液中で生じる恐れがあることが明らかとなった.