材料と環境
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論文
大気中でFeを高温酸化させた皮膜中へのD2Oの拡散浸透挙動
春名 匠山本 達也宮入 洋志柴田 俊夫谷口 直樹坂巻 景子立川 博一
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2015 年 64 巻 5 号 p. 201-206

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抄録
オーバーパック候補材料である炭素鋼の酸素欠乏地下水中での腐食速度を推定するための基礎研究として,Feを大気中で高温酸化することで作製した酸化皮膜中のD2Oの拡散係数を決定することを試みた.Fe板を大気中で573 K,723 Kまたは873 Kで高温酸化させて酸化皮膜を作製した.X線回折およびSEM観察による皮膜性状を確認した後,皮膜にD2Oを接触させ,5184 ksまでの種々の時間保持することでD2Oを浸透させた.D2Oを浸透させた試料に昇温脱離ガス分析試験を行い,皮膜中の浸透D2O量を測定した.573 Kおよび723 Kで酸化させた試料にはFe3O4単層皮膜が,873 Kで酸化させた試料にはFe3O4とFe2O3の二層皮膜が確認された.これらの皮膜へのD2O浸透試験の結果から,D2O浸透量がD2O浸透時間の平方根に対して直線関係を示すこと,ならびに長時間浸透させるとD2O浸透量が定常値を示すことがわかった.これらの関係からFickの第二法則に基づいて推定された各種酸化皮膜中のD2Oの見かけの拡散係数は,Fe3O4皮膜では9.5×10-13 cm2.s-1,Fe2O3皮膜では5.4×10-13 cm2.s-1から2.1×10-12 cm2.s-1であった.
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© 2015 公益社団法人 腐食防食学会
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