Zairyo-to-Kankyo
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解説
二相ステンレス鋼のすき間腐食におけるαまたはγ相の優先溶解機構
青木 聡
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2016 年 65 巻 2 号 p. 45-50

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抄録

二相ステンレス鋼は通常フェライト(α)相のマトリックスに島状のオーステナイト(γ)相がミクロに混在し,その組成と微細組織により,優れた機械的特性,耐食性,そして経済性を併せ持つことから,新たな工業用汎用ステンレス鋼として近年注目されている.一方で,高耐食材料である二相ステンレス鋼といえどもすき間腐食の発生が問題となっており,その重要性が指摘されている.二相ステンレス鋼のすき間腐食では,すき間の入口からすき間奥部までの優先溶解挙動は一様でなく,複雑な溶解挙動を示す.すなわち,すき間の外縁部から内側へかけて順次,不働態領域,γ相が優先溶解した領域,そしてα相が優先溶解した領域が観察される.本稿では,二相ステンレス鋼のすき間腐食成長段階へ至るまでの腐食部優先溶解挙動の推移の観察,ならびにすき間腐食成長時のすき間内の腐食環境模擬溶液下における二相ステンレス鋼およびα,γ各相の溶解挙動の解析に基づき,二相ステンレス鋼のすき間腐食における優先溶解機構を解明することを目的とした研究について述べる.

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© 2016 公益社団法人 腐食防食学会
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