抄録
チオシアン酸アンモニウム溶液は高強度鋼材の水素脆化評価試験で広く使用されている.比液量の増加は,水素脆化評価試験で厳しい評価を示すことが知られていた.水素吸蔵を支配するチオシアン酸イオンの分解を伴うカソード反応によるpH変化に基づき,その原因を説明した.更に,緩衝溶液でpHを制御したチオシアン酸ナトリウム溶液を用いて,水素吸蔵を支配するカソード反応のpH依存性を明らかにした.pHを制御したチオシアン酸ナトリウム溶液は,チオシアン酸アンモニウム溶液に比較して,浸漬法で高い鋼中水素濃度が得られることを示した.