抄録
生体吸収性を持つα型リン酸三カルシウム(α-TCP)に種々の量のケイ酸を添加して,ケイ酸含有量の異なるケイ酸含有リン酸三カルシウムを湿式法で作製し,材料科学的に評価した.
試料はX線回折によりα-TCPと同定され,格子定数の算出から,結晶構造内にケイ酸が含有されていることが示唆された.骨との結合性を評価するために,擬似体液中に浸漬した.浸漬後の試料の表面観察を行うとともに,浸漬後の擬似体液の組成を調べた.その結果,ケイ酸含有量の多い試料は,材料表面に骨の無機主成分である水酸アパタイトが多く析出しており,ケイ酸含有の効果が示唆された.また,ケイ酸含有量の多い試料では擬似体液中にケイ酸の溶出が見られた.