2016 年 65 巻 9 号 p. 386-389
2014年に東大寺敷地内において発見された本坊鋳鉄断片について,同大湯屋鉄湯船(重要文化財)との異同分析を行った.両者のCu/Fe比から,本坊鋳鉄断片は鉄湯船に比べCu/Fe比が1桁低く,両者は異なる組成であることが考えられた.また,鉄湯船より剥離した鉄錆断片試料について錆成分の特定をXRDにより行ったところ,Cl-存在下で形成されるβ-FeOOH: Akaganeiteが錆成分の一つとして同定され,さらにβ-FeOOHは、表面錆だけでなく,地鉄内部にも生成していることを確認した.